読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンUSJ)のV字回復の裏に存在した「数学マーケティング」について、詳細に書かれた本。著者はUSJでチーフ・マーケティング・オフィサーを務めた森岡毅さんと、USJのシニアアナリストの今西 聖貴さん。

森岡さんは元P&G世界本社のブランドマネジャー、USJに入社後、集客数を5年で660万人も増やしUSJを日本一にしたのは有名なお話です。一方、リサーチャーで需要予測家の今西氏は元P&G世界本社の最高頭脳の一人として、世界の第一線で活躍したそう。

本著の前半は、選ばれるブランドになるためには何が大切なのか、数学マーケティングを使って辿り着いた「正解」が紹介されます。

数多くあるマーケティングの本の中で、その主張を確かにする根拠がここまでしっかりと示されたものって、ほかに見たことがないように思います。森岡さんによれば、その正解を追い求めることだけが、企業がやるべきことだと明言されています。

紹介される数式はやや難しいので、文系の人にはすぐには理解できないと思いますが、その数式を補うように、たくさんの文章での説明もセットになっているため、読むだけでその「ニュアンス」はなんとなく理解できると思います。それをどう自分のビジネスに応用するのか?を、それぞれ考える必要がありそうです。

8章の「マーケティングが機能する組織」というところは、中でも私の心をかき乱す章でした。森岡さんによれば、マーケティングが機能する組織にするために多くの経営者はたくさん「誤解」しているとか。

「抜群に優秀なマ ーケタ ーを 1人雇えれば 、自社の経営は大きく改善するはず」と思っているが、「組織システムとしてマ ーケティングをインスト ールしない限りは 、ほとんど意味がない」。また、「その強力なマ ーケタ ーが広告や売り方を改善するという狭い領域のみで 、経営者にとって都合よく活躍してくれるだろうという間違った期待」を持っている。結論としては、「会社の重要な意志決定を消費者の代理人であるマ ーケタ ーに委ねる覚悟もないのに 、消費者プレファレンスにおいて勝ちにいく会社を夢想するのはやめた方が良いということです」。

さらに、「マーケティングデ ータの質が高くとも 、それを分析して活用しようとするマ ーケティング実務担当者側に問題があったのです 。エンタ ーテイメント企業の文化でしょうか 、マ ーケティング実務担当者の傾向として 、次から次に新しいものをやることに興味と情熱が湧きます 。しかし 、終わったことをきっちりと分析して 、学びを抽出して次に活かすという姿勢が 、当時は不足していたように見えました 。」「意識改革のために 、それを 『やりっぱなし文化 』と名付けて 、マ ーケティング組織からの撲滅を目指したのです。」と続きます。

点数の悪いテストを振り返るのは、小学生でもイヤなこと。どんな組織でも、失敗は闇に葬りさられる傾向にあることがよくわかります。

森岡さんはこの本の最後に「日本人は 、もっと合理的に準備してから 、精神的に戦うべき」と言います。この本を執筆したのも、USJで実践した「勝ち方」を惜しげもなく紹介することで多くの日本人に参考にしてもらえれば、日本全体の「勝率」があがるはず、という信念があったからだそう。この姿勢にもすごく感動します。森岡さんはまだ43歳だそうなので、USJを離れたあとは、日本の「プレファレンス」を上げるために、活躍していただけたらなあと思います。